2025/05/30

山研修を行いました

5月26日、27日の一泊二日でイムラの家の木の原点となる奈良県吉野にある川上村へ研修へ行ってきました。
この研修は川上さぷりさん(川上産吉野材販売促進協同組合)にご同行いただき、ご指導いただきました。

1.吉野林業の歴史について学ぶ

研修の1日目は、吉野林業の基本を学ぶところから始まりました。

吉野林業は500年以上の歴史を持ち、「密植」「多間伐」「長伐期」という三つの手法を柱に、節が少なく年輪の詰まった美しい木を育てています。木が材として使えるようになるまで、なんと80年〜100年。

和室が主流だった時代には、見た目の美しさが求められ、節のない木が重宝されていました。 しかし、今の住宅は構造材が見えない「大壁」が主流となり、美しい木の需要は少なくなっています。

それでも吉野の林業家たちは、「今やり方を変えてしまうと、100年後に困るのは次の世代だ」との思いから、変わらず手間をかけて木を育て続けています。山や木と真摯に向き合うその姿勢に、深く心を打たれました。その後実際の木材加工過程を見学させていただきました。

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2.社有林の見学へ

座学のあとは、弊社の社有林を見学しました。道中には杉や桧が立ち並び、険しい道のりながらも、澄んだ空気の中で歩く林道はとても気持ちのよいものでした。

目的地までは道が続いており、歩いて辿り着くことができましたが、川上村の多くの山中にはいまだ道がなく、木材搬出が難しいのが現状です。

かつては川を使っていかだで木を運んでいたという歴史もあり、今でも一部ではヘリコプターを使って木を搬出しています。ただしその方法ではコストが合わず、現在は山の中に作業道を整備して、持続可能な木材流通を実現するための取り組みが進んでいるとのことでした。山と共に生きる地域の課題と未来を考える姿勢を目の当たりにしました。

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3.樽丸工房の見学

社有林の見学を終えたあとは、樽丸職人・春増さんの工房を訪れました。樽丸とは、酒樽の側板に使われる木材のことで、江戸時代から吉野杉がその材料として重宝されてきました。工房では、実際に樽丸を作る全工程を見学しました。現在は機械で木を割っていますが、もともと吉野杉は手でも割れるほど柔らかく加工しやすいため、昔から多くの職人にとって扱いやすい材だったそうです。

木を割るところから始まり、1枚1枚をていねいに整えていく後半の工程は、まさに職人技の世界で春増さんの熟練した手仕事に見とれてしまいました。

また吉野杉には、独特の芳香があります。酒樽として使われると、その香りが中のお酒に移るため、江戸では「吉野の酒はうまい」と評判になったそうです。ところが実は、酒そのものではなく、香りを移した吉野杉の樽が美味しさの秘密だったようでこの話から、「江戸に下らない酒=くだらない酒」と言われるようになり、「くだらない」という言葉の語源になったという興味深い話も伺いました。

山研修を行いました

4. 木材流通とエネルギーについて

研修2日目は、原木市場の見学からスタートしました。市場は2つの業者によって運営されており、大量の丸太が山から運び込まれていました。その中で、特に印象的だったのは、バイオマス燃料として取引される木が多いという点です。そんな中で、川上さぷりの担当者は、年輪のバランスや虫食い跡、水分量などを細かく見極めながら、建築材として使える良質な木を見つけ出して仕入れていました。素人目には違いが分かりづらい木材でも、プロの目によって一つひとつ丁寧に選別されていることに、改めて木に向き合う姿勢の深さを感じました。

続いて訪れたのは、バイオマス発電所とチップ工場。ここでは市場で売れなかった木材や建築現場の端材などが燃料として活用されており、山の資源を無駄にせず、エネルギーへと変えていく循環の仕組みを実際に見ることができました。木を「活かしきる」ことの大切さを学べる貴重な見学でした。

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5.木のある暮らしを支える技術と想い

研修の最後に訪れたのは、吉野杉を使った箸工場でした。ここでは、弊社に納品される構造材の製造過程で出た端材を使い、割りばしを製作しています。使われずに廃棄されがちな部分を有効活用することで、木材を無駄なく使い切る工夫がなされていました。
さらに驚いたのは、箸づくりの作業が比較的シンプルであることから、地域のさまざまな人が関わることができ、川上村の雇用創出にもつながっているという点です。割りばしの97%が海外からの輸入品である中、国産品の約70%が吉野地域で作られているとのこと。実際に香りをかいでみると、吉野杉の割りばしはやさしい香りが印象的で、輸入品との違いをはっきりと感じました。木を大切にし、地域と共に生きるものづくりの姿勢に深く心を打たれました。

 

この研修を通して我々はただ家を売っているだけではなく、何世代にもわたって受け継がれてきた山や木の知恵と技術、そしてそれを支える人々の想いまでもお客様に届けているのだと実感しました。吉野の山で木を育て、選び、形にする人たちの丁寧な仕事があってこそ、私たちの家づくりが成り立っています。木の一本一本に込められた時間と手間、そしてそれを無駄にせず活かしきろうとする取り組みは、まさに「木のある暮らし」の本質を教えてくれました。この学びを、これからの住まいづくりにしっかりと活かしていきたいと思います。

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