建ぺい率とは
建ぺい率(建蔽率)とは「その土地に、どれくらいの広さの一階を取れるか」の割合を示したもの。
たとえば、100坪で建ぺい率60%の土地の場合は、その土地に建築できる建物の1階の面積は60坪までというものです。この割合は、建築基準法という法律によって土地ごとに定められています。
「せっかく100坪の土地があるのだから、土地いっぱいまで広い家を建てたい」そう考えたとしても、法律上それはできないのです。
建ぺい率が設けられている理由の一つは防災のためです。もし、火事が起こった時に隙間なく家が密集していると、もらい火しやすいこと加えて、消火活動や避難の大きな妨げにもなります。地震の時も同様です。
建物同士の間隔を開けて万が一に備えることは、自分の家族や周辺住民の生命を守るためも大切です。
また、もしも建ぺい率の定めがなく誰もが敷地ギリギリまで大きな家を建ててしまったら、日当たりや通気にも影響が出ます。窓を開けたらお隣が目と鼻の先…では、快適な生活はできません。また、隣家の敷地から植木の枝が伸びてきて…と言ったトラブルも多くなることでしょう。
建ぺい率は、その土地が住宅街であるか、あるいは繁華街(商業用地)、工業用地であるかなどの条件によって決まっています。建ぺい率を定めることで、統一感のある街の雰囲気や美観といったものを作り出す効果もあるのです。
建ぺい率と間違いやすい、容積率
建ぺい率とよく一緒に使われる用語に「容積率」というものがあります。建ぺい率と同じく、建築基準法による規制で、その土地に対する建物の「延べ床面積」を定めたものです。つまり、1階、2階、3階…と、全階の床面積を足して考えることになります。
容積率は「建物の高さ(階数)」と非常に関係しています。大まかに言えば「何階建ての建物までなら建てていいのかを示す」と考えても間違いではありません。建ぺい率が「平面的」な概念であるのに対し、容積率は「立体的」な考え方というわけです。
建ぺい率を定めるのには、防災や快適さ、美観などの理由があり、地域ごとの特徴や用途によって設定されていることを先ほどお話ししました。容積率が定められている理由もほぼ同じですが、こちらは「地域人口」への影響が重視されています。もしも容積率の定めがなく、住宅街にいきなり高層ビルがどんどん建ってしまったら、地域の住民に混乱を招いてしまうでしょう。容積率も建ぺい率も、地域の住民が安心して快適に暮らすための規制であるという点は共通です。
建ぺい率と容積率の組み合わせ
建ぺい率と容積率。この二つは、どちらか片方だけではなく両方とも厳守する必要があります。そのため、住宅の建築にあたっては、両方を組み合わせて考える必要があるのです。
では、具体例を見てみましょう。
まず、
「100坪で建ぺい率60%、容積率200%」という土地があったとします。
100坪の敷地のうち最大限1階に取れる面積は60%、つまり上限は60坪分。
容積率は200%なので、延べ床面積の上限は200%で200坪分となります。
建物1階当たり60坪の床面積なら、
平屋の場合の延べ床面積は60坪、
2階建てで120坪、
3階建てで180坪、
4階建てで240坪…。
3階建てまでなら問題はないということになります。
1階と2階は各60坪でも、3階と4階を各40坪にすれば、4階建てにすることも可能です。
ここで
「1階建てで地下室を作ってもいいの?」
「1階がガレージで、2階以上を居室にするとしたら?」
などの疑問が浮かぶ人もいるかもしれません。
建ぺい率・容積率にはさまざまな計算条件があり、また斜線制限などの規制もあるために、実際はこのように単純ではありません。それについては後述しますので、ここでは大まかな考え方として参考程度にしておいてください。
こうすれば建ぺい率が計算ができる!
先ほど、建ぺい率と容積率の組み合わせについてお話ししましたが、建ぺい率の計算式は次の通りです。
建ぺい率 = 建物の一階部分の面積(建築面積) ÷ 土地の面積(敷地面積) × 100
100坪の土地に60坪の建物を建てたと仮定すると、
「60坪 ÷ 100坪 × 100=60」→「建ぺい率60%の建物を建てた」
ことになります。
ここでいう建物の面積とは、建物の壁や柱の中心線で囲まれた部分の面積を表します。建物を真上から見下ろした時の「水平投影面積」で考えます。バルコニーやカーポートなど特殊な部分の面積については、後ほどお話しします。
建ぺい率は何を見ればわかる?
住宅用地の建ぺい率は一般的に40~60%ですが、30%、80%とされる地域もあります。後ほど詳しくお話ししますが、「特定行政庁が指定する角地」など、土地の特徴に応じて緩和が認められる場合もあります。建ぺい率が異なる地域にまたがって住宅を建てる場合には、面積の割合に合わせた加重平均を取ります。
自分が持っている土地、あるいは購入を検討している土地の建ぺい率を調べたい時は、市町村役場の都市計画担当部署に問い合わせると明確です。市町村によっては「都市計画図」を公開している場合もあり、そこから建ぺい率を知ることもできます。容積率についても同様です。
土地を購入する場合には、その土地を取り扱う不動産会社のチラシやWEBサイトに掲載されているので確認してみましょう。よく分からなければ、直接問い合わせてみることをおすすめします。奈良・大阪で注文住宅をお考えの場合、イムラでも土地探しのサポートを行なっておりますのでお気軽にご相談ください。
こうすれば容積率が計算ができる!
次に、容積率の計算方法についてお話しします。容積率の計算式は次の通りです。
容積率 = 建物の延べ床面積(全階の床面積の合計) ÷ 土地の面積(敷地面積)× 100
200坪の土地に、1~3階がそれぞれ60坪の3階建ての建物を建てたとすると、
「(1階:60坪+2階:60坪+3階:60坪)÷ 200 × 100 = 90」→「容積率90%の建物を建てた」
ということになります。
容積率は、面積や高さの条件を満たす地下室や駐車場、駐輪場やガレージ部分に対する緩和が認められています。
その一方で、敷地が12m未満の狭い道路に面している場合は容積率に制限が加えられることもあります。少々複雑な計算が必要になるため、専門家に確認することをおすすめします。奈良や大阪で注文住宅をお考えの方、また奈良や大阪で工務店をお探しの場合は、イムラにてご相談をお受けしています。
建ぺい率には知っておくとよいことがある
建ぺい率の計算方法についての話で、建物とは「建物の壁や柱の中心線で囲まれた部分」であるとお伝えしました。では、壁の外側にある部分については、どのように考えればよいのでしょうか。その答えは【面積や形状によって異なるため、単純に一括りにできない】ということです。
個々の詳しい判断は専門家に相談するのが一般的ですが、特に次の3つは、ある程度の知識を持っておくと役に立ちます。
- バルコニー
- ウッドデッキ
- カーポート
ちなみに、建ぺい率が問題になるのは新築時だけではありません。住み始めてからの増築やDIYでのリフォームも対象になりますので、注意をしてください。
■ バルコニーを設置する場合
バルコニーは、壁から先端、つまり突き出している部分の長さが1m以上の場合、先端から1m後退した部分の面積が建築面積に含まれることとなります。つまり、1m80㎝の長さ(奥行き)を持つバルコニーの場合は「1m80㎝-1m=80㎝」にバルコニー幅をかけた面積が、建築面積として加算されるのです。屋根の庇(ひさし)の張り出し、外階段についても同じように考えます。
ただし、1m以下のバルコニーでも、柱や両端に壁がある場合はすべて建築面積に加算されるので注意しましょう。
■ ウッドデッキを設置する場合
建築面積に含まれないウッドデッキ |
屋根や柱のないウッドデッキは、基本的には建築面積に含まれることはありません。
ただし、屋根がある場合は注意が必要です。次のようなウッドデッキは建築面積に加算されることがあります。
●屋根があり、3方向が開放的で、建物から先端までの長さが2m以上
=先端から2m後退した部分を建築面積とする
●屋根があり、3方向が閉鎖的
=すべてを建築面積とする
建築面積に含まれるウッドデッキ |
2階以上のウッドデッキは、バルコニーと同じように考えれば大丈夫です。
■ カーポートを設置する場合
シャッターやドアがあり、壁で囲まれた駐車スペースは「ガレージ」と呼ばれ、すべて建築面積に含まれます。それに対して、壁がなく、柱と屋根のみの駐車スペースが「カーポート」。建築基準法によって「国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物」とされ、次の条件を満たせば建築面積に含まれません。
- 天井の高さが2.1m以上あること
- 柱の間隔が2m以上あること
- 外壁のない部分が連続して4m以上あること
- 地階を除き、階数が1階であること
一般的なカーポートは、たいていの場合、建築面積には含まれません。
※最終的には確認申請の認可は各自治体の判断になることを留意ください。
建ぺい率が緩和される条件
住宅用地、商業用地など、地域ごとの用途に合わせて上限が決定される建ぺい率。ただし、地域一帯が同一ではなく、土地条件によって緩和される場合があります。建ぺい率が緩和される「角地緩和」には、次の3つがあることを知っておきましょう。
- 街区の角にある角地
- 道路に挟まれた土地
- 公園・広場・河川などに接している土地
■ 街区の角にある角地に建てる
その土地が角地、つまり交差点にある場合には、建ぺい率上限の規制が10%緩和されることがあります。本来の建ぺい率上限が60%の地域であっても、角地ならば敷地の70%(=60%+10%)までは建物を建てられることになります。
ただし、市町村(特定行政庁)ごとに、道路幅や交差点の角度に制限を設けている場合もあるので確認が必要です。「隅切り(すみきり)」と言って、角の一部を切り取って道を曲がりやすくするよう条件を付けている場合もあります。市町村の建築担当部署に問い合わせてみましょう。
【緩和が認められる例(角地)】
■ 道路に挟まれた土地に建てる
道路に挟まれた土地、つまり両側に道路がある土地も、建ぺい率の上限が10%緩和されることがあります。角地の場合と同じく、本来の建ぺい率の上限が60%の地域であっても、敷地の70%(=60%+10%)までは建物を建てられることになります。
ただし、この場合も市町村(特定行政庁)ごとに道路の幅などの条件が付けられていることがありますので、市町村の建築担当部署に問い合わせてみましょう。
■ 公園・広場・河川などに接している土地に建てる
角地や道路に挟まれた土地以外に、公園や広場、河川などに接している土地でも、建ぺい率の上限の10%緩和対象となる場合があります。直接隣接していても、道路を挟んでの隣接でも該当します。
どのような公園や広場、河川が対象となるかは市町村(特定行政庁)によって基準が異なるほか、接し方に関する条件も異なる場合があります。こちらも同様に市町村の建築担当部署に問い合わせてみましょう。
【緩和が認められる例(公園、広場、河川などに接している土地)】
もしも、建ぺい率を超えてしまうと?
現在では、着工前に「建築確認申請」を行うことが義務付けられています。行政や民間の指定確認検査機関に建築計画を提出し、審査を受けなければいけないというものです。
万が一、建ぺい率を超えていることがあれば審査は通過できず、工事を始めることもできませんし、住宅ローンの審査も通りません。現代では、建ぺい率を超えた建物が建築(建築基準法に反する違法建築に該当)されることはありえないと言ってよいでしょう。
建ぺい率を超えてしまう問題は、リフォームの場合に発生することが多いでしょう。特に、数十年前に申請を上げずに工事をした物件に対して増築を行う場合は建ぺい率を超えていないかどうか注意が必要です。
このような物件は、「住宅ローンの審査が通らない」「資産価値が低い」などが主な理由となり、いざ売却したいとなった時に買い手を見つけるのが非常に難しくなる場合もあります。
まとめ
住宅建築にあたっては、法律によってさまざまな規制が設けられています。今回は建ぺい率と容積率を中心にお話ししましたが、ほかにも重要な情報がたくさんあります。せっかくのお家づくりで後悔をしないためにも、これらの知識を身につけ、理想の住まいを手に入れましょう。
奈良で注文住宅をご検討中の方、工務店をお探しの方は、ぜひお気軽にイムラにご相談ください。皆さまの思いに真摯に寄り添いながら、ともに理想のお住まいを作り上げるお手伝いをさせていただきます。
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