木造住宅の耐用年数・4種類
耐用年数とは、何らかの基準やルールによって、あるものの通常予定されている効果を実現できる年数のことです。そのため、一つひとつの建物の寿命とは異なるものとなります。
木造住宅の耐用年数として一般的に知られているのは、「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」「期待耐用年数」の4種類です。ここでは、それぞれの意味について簡単に解説します。
法定耐用年数 | 住宅などの減価償却材に対して定められた、課税の公平性を図るための基準のことです。法定耐用年数はあくまで税務上の目安であり、実際の住宅の状態に即した数字ではありません。 |
物理的耐用年数 | 建築部材そのものの物理的な劣化に伴う耐用年数です。同一環境下で同一の材料の場合、耐用年数も同じになりますが、同一であるという判断は難しい条件のため、算出される数字はあくまで目安となります。 |
経済的耐用年数 | 市場で売買される価値がある期間のことです。住宅の市場価値は、住宅の立地や間取り、メンテナンスの程度など、さまざまな条件で変わります。また、中古住宅の購入を希望する人の割合にも左右されます。 |
期待耐用年数 | 物理的耐用年数と経済的耐用年数の中間的な立ち位置です。通常の維持管理で使用できると想定される耐久年数を指します。期待耐用年数には、中古住宅の価値を向上させ、経済的耐用年数を伸ばす目的もあります。 |
例えば、築50年以上の住宅は、鉄筋コンクリート構造であっても法定耐用年数を超えています。しかし、築50年以上の鉄筋コンクリート住宅でも、必ずしも住めなくなるとは限りません。
法定耐用年数は、あくまで税務上の目安として活用されている、おおよその数字です。建物そのものの寿命と法定耐用年数は異なり、築50年以上の住宅であってもリノベーションすれば住み続けられる可能性があります。
リノベーションできるか否かは、実際の住宅の状態を見て判断することが大切です。正確に判断するために、住宅を確認するときは経験豊富な工務店など、信頼できるプロに相談することをおすすめします。
木造住宅の寿命はメンテナンス次第で変わってくる
一般的に木造建築物の法定耐用年数は22年と定められていますが、木造住宅が22年で住めなくなるわけではありません。木造建築物の寿命は、一般的には30年程度と言われています。
ただし、実際の木造住宅の寿命は、住宅ごとに大きく異なることがポイントです。住宅ローンの最長は35年であり、築40年以上の木造住宅も販売や貸し出しが行われています。中には、築100年以上でも居住が可能な木造物件もあります。
木造住宅の寿命は、一概に「何十年」と言い切れるものではありません。法定耐用年数や物理的耐用年数はあくまで目安であり、メンテナンス次第で木造住宅に長く住むことが可能になります。
ここからは、木造住宅の寿命を伸ばすための代表的なポイントを4つ紹介します。
2-1. 日常的に掃除を行う
木造住宅の寿命を伸ばすためには、日常的に掃除を行うことが大切です。
特に、トイレや浴室、洗面所、キッチンなど水廻り部分は、汚れやカビが発生しやすく、劣化が進行しやすいポイントとなっています。水廻りの汚れや劣化などで排水がうまくいかなくなると、家に湿気がたまりやすくなり、住宅全体の劣化を早める要因にもなるため注意が必要です。日ごろからこまめに掃除をし、異常がないかを都度確認するとよいでしょう。
水廻りの掃除の頻度としては、数日に1回程度がおすすめです。乾燥した状態を保つのは難しいものの、使った後にはきちんと後片付けを行い、なるべく乾いた状態にしましょう。
また、木造住宅は雨樋の掃除も定期的に行うのがおすすめです。雨樋にひび割れや詰まりなどが発生していた場合、排水や防水がうまくできないことで住宅の大切な構造部分が傷むおそれがあります。雨樋は定期的に掃除して水があふれていないかをチェックし、詰まりが確認できた場合は清掃用パイプなどで取り除きましょう。雨樋の掃除の頻度としては、年に1回は行うのが理想的です。
2-2. 日常的に換気を行う
木造住宅にとって、換気は非常に大切です。換気は住宅の中と外の空気を入れ替える目的で行うものであり、換気を行うことで湿気を含んだ空気や汚れた空気が室内から室外に排出されます。
もしあまり換気をしなかった場合、湿気を含んだ空気が住宅内にとどまり、結露やカビを発生させる可能性があります。結露やカビは木材の腐食やシロアリ繁殖の原因になり、住宅寿命を縮めることにもつながるため注意が必要です。
とくに、建ててすぐの木造住宅は、工事中に発生した水分を多く含んでいます。そのため、意識的に換気を行って湿気を屋外に排出することが大切です。
なお、最近の高気密住宅においては、換気を24時間行うシステムが標準装備されており、定期的な空気の入れ替えが自動的に行われています。冬に気温が下がった際などには換気システムを止めたくなることもあるでしょうが、木造住宅の寿命を伸ばすためには換気を止めないことが大切です。
換気は住宅のみならず、人の健康にとってもよい行為です。日常的に換気を行い、湿気や汚れが溜まった空気を外に出すようにしましょう。
2-3. 定期的にメンテナンスを行う
木造住宅に長く住み続けたい場合、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。住宅においては、素人では点検できない場所や破損状況などを判断できないポイントも多々あるため、専門のスキルや知識を持った業者に依頼することをおすすめします。
検査の結果、住宅に劣化や破損があった場合でも、ダメージが浅い段階で専門家に修理を依頼できれば修繕費の削減にもつながるでしょう。
木造住宅はさまざまな建材や住宅設備で構成されているため、メンテナンスも多岐にわたります。メンテナンスを行う場所や頻度の目安は以下の通りです。
【場所別のメンテナンス頻度】
屋根 | ・ストレート(約7年~10年)※吹き替えは30年 |
・ガルバリウム鋼板、瓦(約10~15年) | |
ベランダ | ・約10年 |
キッチン | ・本体(約15年) |
・加熱機器、食洗機(約10~20年) | |
トイレ | ・便器(約20~30年) |
・温水便座(約10~15年) | |
給湯器 | ・約7~15年 |
これから木造住宅の新築や購入を検討している方は、定期的なアフターメンテナンスサービスが付いている、保証期間が長い業者を選ぶとよいでしょう。
2‐4. 長持ちする家を建てる
海外の住宅と比較すると、日本の木造住宅は短命と言われています。これは日本の技術力が低いためではなく、高温多湿や四季による気候変動の激しさといった日本特有の条件が重なった結果、家が腐りやすくなっているためです。
さらに、日本は雨が多く、紫外線も強いため、住宅の外壁が傷みやすくなっています。そういった環境で木造住宅に長く住むためには、最初に長持ちする家を建てることが大切です。
木造住宅の寿命を伸ばすためには定期的なメンテナンスが重要になるため、メンテナンスをしやすい家を建てることも大切なポイントの1つと言えます。例えば、隣家との間隔が狭い場合は外壁部分の修繕などがしにくくなるため、新築の際には隣家との間隔を十分に取るとよいでしょう。
また、日本は自然災害が多い国のため、災害に強い家を建てることも重要になります。家づくりを行う前には地盤調査やハザードマップのチェックを行い、災害リスクの高い土地は避けましょう。住宅自体は、耐震等級3以上の構造にすると地震に対しての耐久性能が高くなります。
まとめ
住宅の「耐用年数」には、法定耐用年数・物理的耐用年数・経済的耐用年数などがあり、それぞれ年数の基準や特徴が異なります。木造建築物の法定耐用年数は22年と定められているものの、実際に22年で居住できなくなるわけではありません。木造住宅の寿命を可能な限り伸ばすには、日頃から掃除や換気を行い定期的にメンテナンスすることが大切です。
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