構造上、工事が難しくなる建物とそのワケ
住宅の構造を分類すると以下の3つに分けることができます。
- 壁で建物の重さを支える構造の2×4(ツーバイフォー)工法(枠組壁工法)
- 鉄とコンクリートで作る鉄筋コンクリート造
- 柱と梁で支える木造在来軸組工法
■ 壁で建物の重さを支える構造の2×4(ツーバイフォー)工法(枠組壁工法)
2×4工法の名前は、建物に2インチ×4インチの角材を使用していることに由来します。
均一のサイズの角材と、合板と呼ばれる板を接合して枠組みをつくり、その枠組みで壁や床、天井や屋根部分がつくられるのが特徴です。2×4工法の建物は、枠組みが建物の重さを支えているので、壁の位置を変えるような間取りの変更は請け負う業者を見つけるのが難しいのが現状です。
■ 鉄とコンクリートで作る鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造は鉄の骨組みの周りに鉄筋を組み、コンクリートを流し込んで施工した建物のことを呼びます。
鉄筋コンクリート造の建物は、柱だけでなく壁でも建物の強度を保つことが特徴で、壁を解体するような間取りの変更はできません。
■ 柱と梁で支える木造在来軸組工法
木造在来軸組工法とは、柱と梁によって建てる工法です。
建物が柱と梁の骨組みで構成されているため、壁の場所や窓口の大きさなど比較的自由な間取りにできます。
リノベーションで大幅な間取りの変更が行えるのは在来軸組工法だけです。
建築工事としておすすめできないご要望の場合
お家が木造在来軸組工法であっても、ご要望によってはリノベーションに向かない、あるいはリノベーションで対応できない工事があります。
- 平屋を2階建てに増築
- どの建物でも難しい改築
■ 平屋を2階建てに増築
一般的に、建物の性能は完成した時点の品質が最も高いといわれています。
たとえば、平屋として建てられた建物に2階を増築すると、建築当初には想定されていなかった建物の重みが屋根にかかり、梁や柱などが荷重に耐えられずに歪んでしまうなど品質の低下につながります。
また、2階の増築は、以下の2つの理由によりおすすめはできません。
- 耐震性
もともと平屋として建てられた建物は、2階部分を増築するとしても既存の建物の強度に依存した耐震性能になるため、構造の状態によっては安全にお住まいいただけるとは限りません。
たとえ、既存の構造を補強したとしても地震発生時には2階部分の荷重を支えきれないということも想定されます。
- 雨漏り
建物の2階部分を増設する際に屋根の構造部分との接続工事が必要となるため地震や台風などで建物に負荷がかかると、結合部にひび割れが生じやすくなります。
とくに、増築部分と既存部分に強度の差があったり構造の接合部分をしっかりと補強できていなかったりすると、揺れの違いが生まれやすく建物のひび割れの原因になります。
建物のひび割れは雨漏りや構造の劣化へと繋がりますので、注意が必要です。
■ どの建物でも共通する難しいパターン
あえて段差を設けることで空間を仕切ることのできるスキップフロアですが、リノベーションで新しく設置するには建物の基礎や天井高の改築が必要になり、建物の安全性を補うための大がかりな工事とそれに伴う費用が発生します。
また、法律で定められた建ぺい率や容積率を超えるような違法な増築ももちろん行うことができません。
*建てられるお家の大きさが決まる建ぺい率について詳しく知りたい方は≪ こちら ≫
土地に問題がある場合
お家が木造在来軸組工法で、構造的にも問題のない要望の場合でも、お家が建つ土地自体に問題がありリノベーションをおすすめできない場合もあります。
代表的な例として不同沈下が挙げられます。不同沈下とは軟弱な地盤の上に建物を建てたとき、建物の重みで地中の水分が逃げ、水分の失われた体積の分だけ沈下し、時間の経過とともに徐々に建物が傾いていく現象のことです。
「建物の傾き」の原因は以下の2つが考えられます。
- 建物の劣化や腐食に伴う歪み
- 地盤が弱く、沈下による歪み
■ 建物の劣化や腐食に伴う歪み
建物の傾きが感じられるときは、床が歪んでいる場合と建物全体が傾いている場合があります。とくに、築年数が経過している家ではカビや雨漏り、シロアリ被害や経年劣化などによって床や柱、土台などの劣化や腐食が進み、家の傾きの原因になっているかもしれません。
■ 地盤が弱く、沈下による歪み
原因はざまざまですが代表的なものとして、もともと田畑であった土地や地下水を多量に汲み上げてしまった土地など、軟弱な地盤の上に建物を建てていた可能性があります。
このような場合、建物にどんな工事を施しても、根本的な原因は地盤にあるため解消しません。地盤を強くしようと思った場合、地中に杭を打ち込むような地盤改良工事が必要になりますが、通常は更地に行われるために、お家を残した状態では実施できず、建物のジャッキアップなど非常に費用のかかる特殊な工事が必要です。
家の歪みがどちらにあてはまるのか。精密建物診断を事前に行い、お住まいの歪みの根本的な原因を明らかにすることが必要です。
*建物の精密診断については《 こちら 》
まとめ
実現が難しいご要望や非常に高いコストがかかり、建替えよりもリノベーションの方が安くできるという理論が成り立たない場合もあります。
そのお家が何代にも渡り維持してきた場合や、思い入れがありそのお家の面影を少しでも多く残したいという場合はリノベーションという選択肢は非常に有効ですが、全てのお家がリノベーションに向くとは限りません。
もし、自身のお家がリノベーションできるのかどうか、一度意見を聞いてみたいという方がおられましたらお気軽にお問い合わせください。
イムラには、築200年の元代官屋敷のリノベーション実績があり、このような古民家再生事業は、残すべき建築の持つ良き佇まいと更新すべき住宅性能とのバランスの取り方が非常に優れており、定期的に性能を改良しながらも、住み継いでいくことができるようにする事例として評価され、2017年度にGOOD DESIGN賞を受賞しました。
*代官屋敷の古民家再生について詳しく知りたい方は《 こちら 》
イムラは奈良・大阪でお家づくりを行っている工務店です。西登美ヶ丘リノベーション体験ハウスは、リノベーション事例をご覧いただける唯一の展示場ですが、どの展示場でも建替えや新築、またリノベーションについてのご相談も承っております。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。