平屋とは
平屋とは、1階建ての建物のことです。平屋の住宅の場合、居間・寝室・子ども部屋・キッチン・浴室・トイレなどすべての間取りがワンフロアに存在します。
1960年代半ばまでの日本では、シンプルな間取りで構成された平屋の住宅が数多く建てられていました。現代における平屋の一般的な間取りは、四角形や長方形、コの字型、ロの字型です。
同じ延べ床面積の平屋と2階建てでは、平屋のほうがより広い敷地を要します。このため、現代では地価の高い都市部のエリアなどでは、平屋を高級住宅と位置づける風潮があります。
平屋を建てる8つのメリット
平屋の住宅は、さまざまなメリットがあります。現代の日本では2階建てや3階建ての住宅を好む人がいる一方で、平屋の魅力や住みやすさに憧れ、マイホームを平屋にしたいと希望している人も少なくありません。
そこで、ここでは平屋を建てるメリットについて主なものを8つ取り上げ、それぞれについて詳しく解説します。
2-1. バリアフリーを実現できる
平屋には階段がないため、バリアフリーを実現できる点は大きなメリットです。バリアフリーを実現できる点は、高齢化社会が進む日本で再び平屋が注目されている理由の1つです。
たとえば、体力が低下した高齢者にとっては、階段を上り下りする際の負担を軽減できます。フラットなワンフロアの平屋では、段差につまずくなどのトラブルも起こらないでしょう。
バリアフリーを実現した住宅は、高齢者に優しいだけではありません。世代を問わず住みやすい環境となります。
幼い子どもがいる家族が2階建ての家に暮らしている場合、階段の事故を防止するためにベビーゲートを設置していることがよくあります。平屋であれば階段がないため、転落する恐れもなく安心感を持てるでしょう。
2-2. 間取りの自由度が高い
平屋の設計は、間取りの自由度が高いという特徴があります。垂直方向の移動を考慮する必要がないため、平面上で部屋や廊下などを組み合わせることができます。
平屋は多層の建物とは異なり、上下階で柱や壁の位置を調整するといった制限も受けません。また、上層階の重量を支えるための壁や柱が不要であり、これらの数を少なく配置でき、間取りの自由度を高められます。
たとえば、壁の代わりに引き戸や障子戸などで部屋の間を仕切ると、戸を開けた際に部屋同士がつながり、解放感のある空間を作れる点もメリットです。
2-3. 階段・廊下のスペースを活用できる
階段や階段へとつながる廊下のスペースは、2階建て以上の建物には欠かせません。平屋には階段や廊下が不要であるため、スペースを有効に活用できる点もメリットです。
階段や踊り場のスペースは通常、4〜5畳(約7〜9平方メートル)ほどです。4畳分のスペースがあれば、趣味の部屋や収納部屋などを設置することも可能でしょう。
階段・廊下・踊り場などが不要となるため、部屋数を増やしたり、ゆとりある間取りにできたりする点は平屋ならではの魅力です。
2-4. 効率的な動線を作りやすい
平屋では垂直方向の移動がないため、効率的な動線を作りやすいというメリットがあります。
2階建ての住宅では、上下の階を行き来する動線が必然的に生じます。2階にある個室から1階の風呂やキッチンに降りる生活動線、1階で洗った洗濯物を2階のベランダやバルコニーに干すため移動する家事動線などです。
ワンフロアにすべてがそろっている平屋の動線は、コンパクトで効率的です。洗濯物や掃除機などの重い荷物を持って移動する場合も、コンパクトで効率的な動線がある方が便利で快適でしょう。
2-5. 家族のコミュニケーションを取りやすい
平屋の建物では、家族の間でコミュニケーションが取りやすくなります。
1階に居間やキッチンなど共同で利用する場、2階に子ども部屋や寝室など個々が利用する場があると、ある程度のプライバシーを保てます。一方で、お互いに何をしているのか分からない、という状況が生まれる可能性も皆無ではありません。
ワンフロアに居間や個室がそろっていれば、お互いに顔を合わせやすく、何をしているのか把握しやすくなります。万が一、何か異変があっても、いち早く気づくことができるという点でも安心です。
顔を合わせる機会が増えると、自然とコミュニケーションを取りやすくなります。円滑なコミュニケーションは、家庭円満の秘訣として重要です。
2-6. 屋外に出やすい
平屋はすべての間取りが地面に近い1階にあるため、玄関はもちろん、テラスや窓などからも屋外に出られます。地震や火事などの災害時で屋内にいることが危険な場合、屋外へ避難しやすい点はメリットです。
2階以上の上層階と比べると、平屋は目線が低い位置にあり、外の景色や自然を近くに感じられるという特徴もあります。キッチンや居間に続くテラスがあれば屋内と屋外に一体感ができ、より開放的な雰囲気も生まれます。
ペットを飼っている家庭では、ドアなどにペット用の小窓を設置しておけば、飼い主の手を借りなくてもペットが自由に出入りできる点もメリットでしょう。
2-7. 大きな開口部・空間を作れる
2階以上の建物の場合、構造上の安定を図るために上層階から下層階への負荷を踏まえて設計することが一般的です。
一方で平屋は、上層階からの重量や圧力に耐えるための壁や柱の数・高さに関する制限を受けません。このため、壁や柱の数・高さの制限が緩やかになり、開口部を大きくしたり、天井を高くしたりして、大きな空間を作れる点はメリットです。
大きな開口部・空間がある建物の中では、解放感あふれる贅沢な雰囲気を演出できます。窓の数を増やしたり、大きな窓を取り付けたりすると、外光を多く取り入れられるために屋内が明るくなるという実用的なメリットもあります。
2-8. 小屋裏を活用できる
平屋は1階層のみの建物であるものの、屋根下にある小屋裏を活用すると、さらなるスペースを確保することが可能です。小屋裏として使えるスペースの仕様などについては、建築基準法に市区町村が独自のルールを追加し定めています。
市区町村によって細かな違いはあるものの、「小屋裏の床から天井までの高さが1.4メートル以下」「面積は下にある階の2分の1」の2点がほぼ共通したルールです。
ルールの範囲内であれば、収納スペースや子どもの遊び場、趣味の収集品を展示するギャラリーなどを展開できます。天井はやや低いものの、アイデア次第で広いスペースを有効的に活用できる点は魅力です。
平屋を建てる5つのデメリット
平屋には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも伴います。このため、マイホームを建てる際にはメリットとデメリットの両面について理解を深め、平屋を選択するかどうかという結論を出すことが大切です。
ここでは、平屋を建てる場合のデメリットとなる5つのポイントを取り上げ、それぞれについて詳しく解説します。
3-1. ある程度の土地の広さが必要になる
2階建てと同じ延床面積で平屋の家を建てようとすれば、2階建てよりも広い土地が必要です。単純に、2階建ての土地よりも2倍広い土地があれば良い、というわけでもありません。
2階建てと同じ延床面積がおさまる土地があっても、隣家や道路との境界線ぎりぎりまで建物を建てることが難しい場合があります。用途地域によって建ぺい率が50%、70%などと定まっており、土地のすべてを利用できないためです。
加えて、庭や駐車スペースを確保したい場合はさらなる土地が必要となります。
3-2. 日当たり・風通しの悪い空間ができやすい
平屋は基本的に低い位置にあるため、場合によっては日当たり・風通しの悪い空間ができてしまいます。たとえば、近隣にマンションなど高層の建物が多く建っている土地では、日照時間が短くなる可能性もあるでしょう。
また、ワンフロアにすべての間取りをおさめるため、窓のない部屋ができる場合もあります。窓がなく四方を壁やドアに囲まれた部屋には外光が入らなかったり、風通しが悪くなったりする点はデメリットです。
ただし、家の形を工夫することでデメリットをある程度補うことは可能です。家をコの字型・ロの字型・L字型にすると、日当たりや風通しを改善できます。また、窓を全方位に設置したり、数を増やしたりしても、同様の効果を期待できます。
3-3. プライバシーを確保しにくい
平屋には、家族同士でコミュニケーションを取りやすいというメリットがあります。一方で、全員がワンフロアで暮らしているため、お互いのプライバシーを確保しにくくなる点はデメリットです。
平屋の場合、屋内のみならず、外部からもプライバシーを確保しにくい面もあります。上層階にある部屋よりも、1階にある部屋は隣家や道路などから視線が届きやすいためです。
屋内のプライバシーは、部屋と部屋の間に廊下を配置したり、間取りを工夫したりすると、ある程度確保できます。また、外部からのプライバシーに対しては、建物の周囲に庭を設けると視線が屋内まで届きにくくなります。
3-4. 防犯面での配慮が必要になる
2階建ての建物であっても、不審者が侵入する際は通常、1階の窓やドアを利用することが多いでしょう。したがって、平屋のみが犯罪面での配慮が必要になるわけではありません。平屋でも2階建てでも、防犯面への配慮は大切です。
ただし、平屋には寝室や浴室も1階にあるため、防犯面での十分な配慮が不可欠です。窓を開けっ放しにして就寝したり、入浴したりすることは好ましくありません。
平屋における防犯対策としては、建物の周囲に人感センサーライトを設置したり、砂利を敷いたりする方法などがあります。高い壁は屋外からプライバシーを確保できる一方で、不審者に有利に働く可能性も否めません。
3-5. 垂直避難ができず水害に弱い
集中豪雨による河川の氾濫で道路や床下・床上が浸水しても、平屋では2階建てや3階建てのように上層階へと逃げる垂直避難ができません。大きな水害が起きた際、屋内に逃げ場がないという点はデメリットです。
平屋を建てることを検討している人は、家を建てるエリアが水害による被害予想範囲に入らないことなどをハザードマップで確認してください。土地購入の前であれば、水害が及ぶ可能性が低い土地であるかを確認して、土地を選ぶことをおすすめします。
平屋と2階建てはどちらがおすすめ
平屋と2階建てのどちらが良いかは、一概には言えません。マイホームに抱く理想は人それぞれで、家庭の事情や土地の条件などが異なるためです。諸条件を無視して、平屋あるいは2階建てと決めつけてマイホームづくりにとりかかることはおすすめできません。
平屋と2階建てでは、それぞれで特徴・メリット・デメリットが異なります。ほかの人にとってのメリットが、自分にはデメリットとなる場合もあるでしょう。
平屋と2階建ての特徴などをしっかりと比較するとともに、自分の希望・家族構成・生活スタイル・周辺環境など幅広い観点から検討して最終的に決定をしましょう。
魅力的な平屋の施工例6選
満足できる平屋を建てるためには、さまざまな平屋の施工例を見比べることが重要です。魅力的な施工例には、平屋を建てる際に配慮したほうが良いポイントやコツがたくさん詰まっており、大変参考となります。
そこで、以下では5つの魅力的な平屋の施工例を紹介します。
5-1. 西海岸風な平屋の木の家
住宅の前面に設置されたカバードポーチが、西海岸風のおしゃれな雰囲気を醸し出している施工例です。
明るく開放的な4LDKの建物内では、吉野杉や珪藻土といった自然素材が床や壁、仕切り、梁などに用いられています。自然素材の多用も、家の魅力を高めているポイントです。
吉野杉は強度に優れた建材であり、随所に用いていることで、独特の良い香りが室内に漂います。一方の珪藻土も自然志向の生活スタイルに向いている素材であり、室内の湿度調整効果や消臭効果、高い耐火性といった実用性も備えています。
5-2. 家族がLDKに集まる平屋の木の家
家族が集まるLDKに勾配天井を設けた、開放感あふれる5LDKの平屋です。勾配天井に高窓のハイサイドサッシを取り入れ、通風や採光を確保できるよう工夫を凝らしています。
子育て世代が暮らす家であるため、設計には「ワークスペースや子ども部屋への動線」「LDKを中心とした水廻りの回遊性」などを重視しています。
ダイニングとリビングをさりげなく分けているのが十字の柱です。リビング部分に設けた畳コーナーと木の床面とは段差がなく、バリアフリーのモダンな空間となっています。
5-3. 長く住み継ぐ平屋の木の家
築46年の平屋をリノベーションした施工例です。古いものすべてを取り除くのではなく、梁を再利用して勾配天井に用いるなど、長く住み継ぐ家を実現しています。
建物の周囲は、暗い印象を与えていた目隠し用の植栽を取り除き、駐車場スペースを設けて明るく変身させました。さらに、屋根を地震に強い軽量な素材で葺き替えた点もポイントです。
細かい間取りだったLDK部分はリノベーション後、窓から日差しがたっぷりと入り、明るく居心地の良い空間となりました。地産地消、自然素材の活用というオーナーの希望も取り入れた仕上がりとなっています。
5-4. 質感にこだわった平屋の木の家
重厚感のある上質な外観や内装で、ゆとりと癒しのある住まいを実現した2LDKの平屋です。大人の夫婦2人の住まいにふさわしい、落ち着きも備わっています。
屋内外の装飾や目隠しに使われている格子をはじめ、玄関の地窓や対面キッチンなど、実用性とデザイン性を兼ね備えた仕様を随所に取り入れている点は特徴的です。
間取りはアウトドアリビングを兼ねたデッキを玄関とLDKで囲むコの字型となっており、明るい空間をつくり出しています。小上がりのモダンな和室もリビングと調和しています。
5-5. 勾配天井のリビングが自慢の平屋の木の家
リビングからウッドデッキへ、ウッドデッキから庭へと続く広がりが魅力的な3LDKの平屋です。板張りの勾配天井やフローリングによって、木のぬくもりがあふれる住まいとなっています。
配膳や片付けを意識したダイニングの配置、キッチン回りを360度回遊できる家事動線など、至るところにこだわりを盛り込んでいます。
玄関の土間収納をはじめ、書籍コーナー・トイレの造作カウンター・洗面脱衣室といった収納スペースに木をふんだんに使っている点も魅力です。
5-6. コの字型の中庭のある平屋の木の家
夫婦と子どもの5人がプライベート空間を確保しつつ、家族の時間を大切に暮らせる4LDKの平屋です。勾配天井を設けた広々としたLDKは明るく、解放感にあふれています。
工務店とは土地選びから一緒に始め、オーナー様の希望を満たした土地にマッチする住宅を設計できた点もポイントです。
部屋から屋外の緑を楽しめる上、屋内を風が通り抜ける設計となっています。
まとめ
平屋とは、階層が1階だけの構造となった建物のことです。階段がないため、バリアフリーを実現できる点が魅力です。ほかにも、間取りの自由度が高く、家族のコミュニケーションを取りやすい点なども魅力と言えます。
平屋を選択するか否かは、生活スタイルや家族のニーズなどから総合的に判断する必要があります。
「イムラ」は、吉野杉や珪藻土などの自然の素材を使用して家を建てる奈良県の工務店です。住み心地にこだわった平屋の施工事例も数多くあります。奈良県・大阪府で木造の注文住宅を建てたいと考えている方は、ぜひイムラにご相談ください。
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